「華憐妖精ミンメイ」が最強だった話
かつての少年たちは皆、プレイはしていなくてもそのタイトルを聞いたことはあるだろう。
日本国内において遊戯王に次ぐシェアNo.2のカードゲームであり、15年近い歴史のある大人気ホビーである。以下「デュエマ」と記載する。
ざっくりとしたルールはこうだ。
マナ(=コスト)を貯めてクリーチャーを召喚し、相手を守る5枚のシールドに攻撃していく。5枚のシールドを全て攻撃して破壊し、最後に相手プレイヤーに直接攻撃を決めた方の勝利。
シンプルながら奥深く、戦略性があるのに程よく運要素も絡む。私も昔よく遊んでいた。めっちゃおもろい。
その私が遊んでいたデュエマの中に、ぶっっっちぎりで最強のカードが存在していた。
「華憐妖精ミンメイ」である。
...
アストラルリーフ?ボルバルザーク?
違う違う。「華憐妖精ミンメイ」である。
華憐妖精ミンメイ
コスト7 パワー2000 種族スノーフェアリー
自分のマナゾーンにある多色クリーチャーを召喚してもよい。
あなたたちに期待なんかしてなかったのに。
可愛い。流石は妖精をモチーフにした種族、スノーフェアリーである。以下「ミンメイ」と表記する。
デュエマでは、1ターンにつき1枚、自分の手札からカードを1枚、マナゾーンに置くことができる。
つまり、1ターン目には1コスト、2ターン目には2コストのカードが使えるようになるというわけだ。
もちろん厳密ではないのだが、ミンメイを召喚できるのは通常7ターン目、早くても6ないしは5ターン目である。
パワー10000を超えるクリーチャーがゴロゴロ存在するデュエルマスターズにおいて、7コストも払ってたったのパワー2000のクリーチャーを召喚したのでは割に合わない。
しかし、特筆すべきはその効果である。
・自分のマナゾーンにある多色クリーチャーを召喚してもよい。
!!???!?!??!!???!?
オーケイ。状況を整理しよう。
そもそも、デュエルマスターズカードには火、自然、水、光、闇の5つの文明、つまり色が存在する。「青銅の鎧」は緑色、つまり自然文明である。
例えば、火文明のクリーチャーを召喚するためには、マナゾーンに同じ火文明のカードが存在していなければならない。
このように、同じ文明同士はシナジーが噛み合うようにデザインされている。上記のルールもあり、色事故を防ぐために大体1〜3色でデッキを構成するのが普通である。
それに対し、「多色クリーチャー」と呼ばれる、複数の文明を持つクリーチャーも存在する。
例えばこの「無頼勇気ゴンタ」は、火文明と自然文明の2色を持つ。つまり召喚するためにも2色必要であり、条件が難しい分コストに対するパワーが高い。
「マナゾーンに置くときタップして置く」という一文であるが、要はマナゾーンに置いたターンはコストとして使えないと思っていただければよい。
つまり重要なのは、「多色クリーチャー」には強力なものが多いという事実である。
ミンメイはこれらのクリーチャーを自分のマナゾーンから出せる。
つまり、
ミンメイを召喚した時点で、自分のマナゾーンにある多色クリーチャーが一緒にわらわら出てくる
というわけである。
お友達にもほどがある。VIPゼルダもびっくりだ。
ミンメイが収録された拡張パックである「極神編(バイオレンス・ヘブン)」と、そのシリーズには、数多くの強力な多色クリーチャーが収録されている。
これらの「なんかよくわからんけど派手な多色クリーチャー」は、コストや文明の関係でバトルゾーンに出すのが難しい代わりに、一度出してさえしまえば強力な効果を発揮する。
そんなクリーチャーたちがミンメイの手にかかれば7ターン目前後に大量に飛んでくるのだ。
そして、「鎧亜の咆哮キリュー・ジルヴェス」という多色クリーチャーが存在する。
通常デュエマでは、クリーチャーはバトルゾーンに出したターンに攻撃をすることができない(召喚酔い)。しかしこの「キリュージルヴェス」をバトルゾーンに出すと、召喚酔いを打ち消し、そのターン中に出した全てのクリーチャーが攻撃をすることができるようになる。
言い換えれば、「『キリュージルヴェス』を出したターンにゲームが終わる」
当然ミンメイを召喚したターンにキリューも一緒に飛んでくる。デュエマは7ターンで決着がつくゲームなのである。
このミンメイの強さに気が付いてからの私の周囲の環境は酷いものだった。
じゃんけんをする。先行を取る。ミンメイを出す。勝つ。そんなゲームだった。
皆がミンメイを買い求めた。ある友人はサティ(死語?)のホビーショップのカードコーナーで3000円で購入した。私は母親に頼んでオークションで780円で購入した。3000円の後だったため安すぎて歓喜したことを覚えている。
勝負はシャッフルの段階で始まっていた。当時小学生の私たちの間に、対戦相手のデッキをシャッフルするという文化は存在しなかった。対戦前も、カードの効果等あっても、全て自分でシャッフルだ。ショットガンシャッフルはカードを痛めるぜ!(やらなかった)
つまり、シャッフルの仕方次第でトップデックにキーカードを集めることなど容易いことだった。案の定、全員が全員初手にミンメイを持っていた(同じ理屈でシールド・トリガーを仕込んだりもしていた。最後のシールドからアポカリプス・デイが出てきたときにはキレた)。
当時の私たちにまともなデッキ構築力など当然なかったので、大量の多色カードにミンメイを突っ込む雑なデッキであったが、皆当然のようにミンメイを引いた(手札破壊を入れるという発想も当然なかった)。周りでミンメイを持っている者が増えてくると、少しずつサポートカードで差別化も図るようになった。
例えば「金色の精霊クロスヘイム」
自分の多色クリーチャーが全て「ブロッカー」を得るこいつによって、守りも固めることができる。コロコロコミックの漫画でも地味に使われいたカードである。
他には「フェアリー・ミラクル」
当然のように5色デッキになるので、いち早くミンメイを出すために投入した。なお、2マナ加速を成功させられるほどの構築力はなかったが。
余談だが、この時期のデュエマには私が歴代で最も好きなカードが存在する。
「聖鎧亜キング・アルカディアス」である。
かっこよ!
その強さとかっこよさから、小学校の卒業文集にも書いたほどである。
そしてシークレットverも存在する
かっこよすぎて泣きそうである。
漫画でも大活躍したクリーチャーである。当時イエスマン様に憧れてデッキを構築した小学生は数知れないはずだ。
ここまでで分かってもらえたと思うが、ミンメイは最強なのだ。
小学生の頭脳では、手札破壊をしたり、マナ破壊をするという対策はなかなか思いつかないし、思いついたとしても資産的に組めない場合も多かった。
ミンメイマスターズ。そう、ミンメイマスターズなのだ。このゲームは。きっと今頃ミンメイは禁止カードにでもなっているだろう。さらばミンメイ。フォーエバー。
まあそんなわけないんだけどね!!!!!
うむ。ここまで書いたことはほぼ嘘っぱちである。
どういうことか。
一言で言うならば、デュエマにおいて「召喚」と「バトルゾーンに出す」は全く違う行為であるということだ。
どちらもバトルゾーンにクリーチャーを出すことではあるのだが、「召喚」とは、コストを支払って出すことなのだ。
ミンメイのテキストにもし「コストを支払わずに召喚しても良い」とか、「コストを支払わずにバトルゾーンに出しても良い」とか書いてあれば、本当にぶっ壊れカードだっただろう。
しかし実際のテキストには「召喚しても良い」としか書いていない。つまりちゃんとコストを支払ってマナからバトルゾーンに召喚しなさいということなのである(ややこしいなあ)
つまりミンメイは強くない、ていうか弱い。面白いカードだけど弱かったのだ。
この事実に気がついたのはミンメイが流行りだしてから数ヶ月〜半年後くらいだっただろうか。それまではぶん回すだけのゲームだった。
最近の小学生はネットで情報を仕入れることが多いため、こういったルールの誤りなども少なくなっているのだろう。しかし我々の時代はそうではなかったのだ。
最初に気がついたのは私だったと思う。強さを求めて某王国のサイトに辿り着き、そこで上記のルールの違いを知ったからだ。
忽然と終了したミンメイ時代は、思い返すとめちゃくちゃでありながらも、パワーカードをぶん回す下品な楽しさもあったと思う。
ちなみにデュエマはかなり長いことやっていたが、私はコントロール系のデッキが大好きである。陰湿なのである。同じ陰湿な人、飲みにいきましょう。
もうカードは一枚も持っていないけれど、たまには当時のデッキで遊びたくなる、そんな感傷に浸った記事でした。ていうかこのルール、世間の子供達はちゃんと把握してたのかなあ。
ではこの辺で。
P.S.
3000円に設定したサティ完全にぼったくりじゃない??